今年、印象に残ったこと

指を切った。実に深く。確か、3月くらいだったと思う。
原因は、チーズ用のナイフを滑らせたこと。
右手に持ったチェダーチーズの固まりを切ろうとして、左手のチーズナイフに力を入れた。
自分では気付いていなかったが、力が入り過ぎていた。
チーズナイフはチェダーチーズと共に、自分の中指までも深く切り裂いた。
中指の爪先から、第一関節のちょうど間だ。
その瞬間の光景は、今でも鮮明に覚えている。
不思議と痛みは感じなかった。
それでも目に入ってきた色黒い血と、ウインナーの中身のような肉片に、声にならない叫びを上げた。
ひどく取り乱し、息が荒くなった。マラソン中のように、肩で息をした。
必死で指をティッシュで包んだ。止血のためだが、本当は見たくなかったのだと思う。
それからは、倒れるように座り込んだ。ぎっくり腰でもないのに、しばらくは立ち上がれなかった。
たまたま休日で、親父が居たので怪我を見てもらった。
すると最悪の自体は外れたと分かった。切り口は深いが、指が落ちるほどではなかったからだ。
血は随分と止まらなかったが、出血の量自体は思ったほどでもなかった。
ただ、指の違和感はいっこうに取れない。一連のショックから、初めて気を失いそうになった。
横になると多少は楽になった。そして気付くと、指を握ったまま眠っていた。
その後はだいぶ落ち着き、指のほうの血も止まってきた。痛みはそれほどではなかったので、結局病院へは行かなかった。
その後傷は少しずつ固まり、埋まっていった。一週間以上は掛かっただろうか?よくは憶えてない。
ただ、切った瞬間の映像は、今も頭に焼き付いて離れない。今でも不意に思い出すと苦しい、気持ち悪い。
このトラウマは一生取れないかもしれない。ただ、最悪の事態にはならなくて本当によかった。
皆も、チーズを手のひらに乗せて切っては絶対に駄目だ。絶対に。今の自分に言えるのは、このくらいだ。