『おおかみこどもの雨と雪』はカレーライス

今、巷で話題の『おおかみこどもの雨と雪』を観てきた。
その感想。


一言で表わすならば「カレーライス」


それ程、万人向けに作られていた作品であり、万人向け過ぎて味気なく、正直、消化不良…。
カレー、それも「バーモントカレー」のルー100%のみで作ったカレーのような作品で、とにかく幅広いそうに受けるよう狙った内容になっていて、クセがなくまろやかな作品。まろやか過ぎで逆にくどく、「もう飽きたよw」て呟きたくなる内容だったw
だからこそ個人的にはもの足りない内容であり、もっと作品自体の展開、テーマに独特の雰囲気や表現が欲しかった。それはもうバーモントカレーのような普遍的なカレーじゃなくて、田舎インドの「このカレー辛過ぎじゃね?しかも変に野獣臭いし…何の肉使ってるんだよ?」ぐらいの、「一部にウケればいいやww」という思い切りのよさ、作品にもっと独特の個性が欲しかった。
でも宣伝を見ると、この映画は元々がそう言う主旨みたいなんで、「看板に家庭のカレー味って書いてあるのに、そんな何処かも分からぬクソ田舎のクソッ辛い野獣臭するインドカレーなんか出したら、クレーム来るだろ!」って言われたら、それまでなんだけどw


子供が”狼人間”という、設定が主にも関わらず、その設定を生かし切れていないように思え、正直「これ別に狼人間じゃなくて、他の動物との混合人間でも良かったんじゃあ?」と思えるほど狼人間という設定は生きてない。
だから、混合人間であることの葛藤じゃなくて、狼人間だから、という葛藤の模写がよりほしかった。その”狼人間”という設定自体は悪くないと思ったので、それがまたもったいなくも思えた。


押田守監督の作品は『時をかける少女』、『サマーウォーズ』と観てきたけれど、個人的にはどんどんと勢いが落ちている気がする…。
あと、この映画の観想を見ると顕著に褒めている意見が目立つが、あまりに多いと「ステマでは…」と観終えてからだと思えてしまった。
時をかける少女』が口コミでヒットした作品であるのに対し、この『おおかみこどもの雨と雪』は口コミからではヒットしない作品だと思う。
累計の興行収入が10億円を突破したらしいが、それは莫大な公告・ステマ・監督の名声あってのことで、もしこれらがなかったら、決してここまでのヒットはしなかったと思う。


観終わって次に思ったのは、「富野由悠季監督が絶賛している理由が分かった」ということ。
確かにこの映画、負けず嫌いの監督からするとベタ褒めする映画だったよww


全体的には無理して小奇麗にまとめ過ぎている感がひどく、『アニメーションがすごい絵本』と行った印象。前半は『田舎に泊まろう』のステマかと思ったw
主人公おかあさんの過去をもっと掘り下げ、より描けば感情移入も深まり、もっと深みのある作品になったと思うけど…。
ストーリー自体は悪くないのに、焦点の幅を利かせすぎて、逆にぼやけてしまっていた印象も。だから色々な意味で惜しい映画で、もったいない映画だなぁとも思った。
ただ文句なしに良かった点は声優で、宮崎あおいの声優は全く違和感なく、プロの声優さんかと思えるほど。
やはり芸能人でも、声優が上手い人は上手いね。