スローターハウス5  カート・ヴォガット

感想。
なかなか面白い。実に意味深な内容。
ヴォガットの作品は、これが初めて。
黙示録的な、叙事録的な、回想的な作品。
戦争によるリアルな模写や出来事、トラウマ。
そういった出来事が、異星人との交流を交えた模写で語られる。
フィクションとノンフィクションの融合。そんな作品。
胡散臭いと思わせない魅了がこの本にはある。
時間の概念は線であると語られるが、それは実際に正しいのかもしれない。
それこそ量子論の話であり、時間軸とは線であり実際には過去も未来も同じ。
人間はそれを見ることも捉えることも出来ないだけ。
神秘的で哲学的ながらも、物理の概念もあり、だから説得力を感じた。
もちろんフィクションでトンデモ論だが、実際にすべてがまやかしとは言い切れない。
SFとして魅力ある作品であると同時に反戦に向けてのメッセージ作品でもあり、そして時間の概念を疑問視する作品でもある。
よって忙しい作品だが、それをこここまで小難しくなく、シンプルに、美しく、読み易く仕上て来た。作者が凄いとしか言いようが無い。